エンジンオイルは何を入れればいいの?
ヴィンテージハーレーに入れるエンジンオイルは何を入れれば良いのでしょうか。
ヴィンテージハーレーには特別なエンジンオイルが必要なのでしょうか。
エンジンオイルが大切な役割を担っているのは皆様理解されていると思いますが、ひとえにエンジンオイルといっても様々な種類があります。ご自身のバイクや車には何が最適なのか、参考にしていただければと思います。
エンジンオイルの役割
まずはエンジンオイルの役割について整理してみます。エンジンオイルの役割自体は、ヴィンテージハーレーでも、英車でも、最新の日本車でも、自動車でも同じです。
主に以下の5つの役割を担っています。
01潤滑
エンジン内では、ピストンやシャフト類・ギア類が組み合わさり、1分間に数百~数千の速さで回転・上下運動しています。エンジンオイルは、そういった金属同士の摩耗や焼き付きを軽減し、なめらかに動くように、間に分子レベルで入り込みコーティングして直接接触しないようにすることで、減摩、緩衝の役割を担っています。
02冷却
エンジン内では、ガソリンの燃焼や、金属同士の摩擦等により非常に高温になります。エンジンオイルはエンジン内を循環することにより、これらの熱を吸収し、オイルパンに戻り蓄積されることで冷却されます。冷却されたオイルは再びエンジン内部を循環し、これを繰り返すことで冷却機能を維持する役割を担っています。
03密閉
シリンダー、ピストン、ピストンリングの隙間を密閉してエネルギーの生成効率を向上させる役割を担っています。また、混合気や排気ガスの漏れを防ぎ、オイル下がり・オイル上がりの白煙を防止します。
04清掃
ガソリンが燃焼することで発生するスラッジという汚れがエンジン内部に蓄積されます。また、金属同士が摩耗することで鉄粉なども蓄積されます。これらの汚れが特定の場所に留まらないように、汚れを吸着し、分散する役割を担っています。汚れを吸着することで、エンジンオイルは少しずつ黒く変色していきます。
05防錆
エンジン稼働中と非稼働中の温度差によってエンジン内部に水滴が付いてしまいます。エンジンオイルは各金属をコーティングして錆を予防する役割を担っています。
エンジンオイルの材質(ベースオイル)
エンジンオイルはベースとなるオイルに各オイルメーカーが添加剤を追加してできています。ベースオイルには以下の3つがあります。それぞれの特徴を見てみます。
01鉱物油
鉱物油は、原油を蒸留・精製した昔ながらのエンジンオイルです。耐熱性能や酸化に弱く劣化しやすいのが特徴ですが、こまめに交換すれば特に支障なく走行できるレベルの品質は維持されています。また、その分、リーズナブルな価格帯となっています。
昔からあるエンジンオイルですので、旧車との親和性がよく、幅広く使用されています。
02化学合成油
化学合成油は、原油に高度で且つ複雑な過程を施して精製しているため、不純物が少なく純度や浸透性が高い、高性能で高品質なエンジンオイルです。低温に強く、寒い時期でもエンジンの始動性が良いです。また、耐熱性も高いのでオイルの劣化がしにくく、さらに蒸発性も低いのでオイルが無駄に蒸発することがないのも特徴です。
高性能、高品質であるがゆえに値段が高いため、レースや過酷な状況での使用、長期間大切に維持したい場合などにオススメの高級オイルです。
しかし、旧車などではガスケットが対応していないこともあるため、オイル漏れや思わぬ不具合が発生してしまう場合があります。
03部分合成油
部分合成油は、鉱物油をベースに化学合成油を混合して作成されたオイルです。鉱物油の弱点である酸化に弱い点や劣化しやすい点などを化学合成油の成分で補うように設計されています。
部分合成油中の化学合成油の割合は20%以上と決められていますが、各メーカーや製品によって化学合成油の割合や質が異なるため、選択が難しい点があります。
価格も、化学合成油よりは安価ですが、鉱物油よりは高く、製品によって様々です。
エンジンオイルの粘度・グレード
エンジンオイルには品質による規格などいくつかの規格がありますが、ここでは粘度での規格であるSAE規格をベースに説明します。
SAE規格は、アメリカ自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)というアメリカの非営利団体が、「オイルの粘度」を定めた規格で、世界中で広く普及しています。
SAE規格では、低温粘度(柔らかさ)を表す「0W」「5W」「10W」「15W」「20W」「25W」、高温粘度(硬さ)を表す「20」「30」「40」「50」「60」の11段階で表記され、数字が大きくなるほど粘度が高く(硬く)なります。そして、表記には大きく分けて「マルチグレード」と「シングルグレード」の2種類があります。
01マルチグレード
マルチグレードは「5W-30」や「10W-40」のように、低温時の粘度と高温時の粘度の2つが表記されています。低温時の数字の右に付いている「W」は「Winter」の略で、冬の時期、つまりは低温時の粘度を表す数字で、この数値が小さいほど低温時に粘度が低い(柔らかい)ということを示し、実際は、-25度や-30度での試験にクリアしているということになります。 低温時にエンジンの始動性や燃費が良いため、この数値が小さいほど寒い土地に向いているとされています。
右側の数字は高温時に粘度が高い(硬い)ということを示し、実際は、100度での試験にクリアしているということになります。 この値が大きいほど高温でも硬さを保つことが可能で、夏の時期やハードに使用する時などの選択の基準となります。また、熱に強いので、高速性能や耐摩耗性に優れているということでもあります。
つまり、左側の数値(低温時)と右側の数値(高温時)の数字の幅が広いほど使用可能な温度の幅が広くなるので、あらゆる季節や利用シーンに対応できるマルチなエンジンオイルということになります。
02シングルグレード
シングルグレードは「SEA40」や「SEA50」のように、単一の粘度だけが表記されています。マルチグレードの右側と同じで、高温時に粘度が高い(硬い)ということを示しています。したがって、季節によって使い分ける必要があります。
ヴィンテージハーレーにオススメのエンジンオイルは?
これまではヴィンテージハーレーをはじめ旧車では、「鉱物油 シングル50」がスタンダードでした。理由としては各部のクリアランスが広くオイル漏れがひどい場合が多いからです。しかし、最近のオーバーホールでは、各部のクリアランスは詰めていますし、ガスケット類も化学合成油に対応しているものが増えています。これまでのエンジンオイルの役割や各ベースオイルの説明などを鑑みてナイトメアがオススメするエンジンオイルは以下になります。
01ベースオイル
ガスケットやシールが対応しているのならば、化学合成油がオススメです。
性能と価格は比例しますので高い化学合成油は性能も高いです。これを入れておけば間違いないのですが、お財布と相談して、真夏やロングツーリングの時は化学合成油、春や秋は部分合成油などの選択もありだと思います。
ただし、化学合成油は浸透率も高いので、対応ガスケットであってもオイル漏れが発生しやすく、場所によってはマフラーなどにかかってしまい白煙が発生したりオイル臭くなります。また、駐車時のオイルのお漏らしも増えます。このあたりが許容範囲であれば化学合成油が良いでしょう。
ただし、何でも良いわけではありません。バルブ等のコーティングを剥がしてしまう成分が入っていたり、強力な膜を張るタイプなど、エンジンの状態に向き不向きはありますので、お近くのハーレー屋さんに相談しましょう。
素性の分からないエンジン、長くオーバーホールしていないエンジン、ガスケットが対応していないエンジン、各部の面が出ていないエンジン、オイル漏れを極力なくしたい場合、お財布が寂しい場合などは、鉱物油を選択してください。
02粘度
「20W-50」であれば、寒冷時は20W、100度の高温時では50の性能ということになります。したがって基本的な走行時の性能は50の部分が大切になります。
そして、シングル50でもマルチの20W-50でも高温時の性能は同じということになります。何社かのオイルメーカーに確認しましたが、みなさん、シングル50を入れる意味はあまりなく、寒冷時にもエンジン始動性やがよく、始動時の初期潤滑にもよい「20W-50」をオススメします、とのことでした。
真夏などはシングル50で良いのでコストを含めて考えてみてください。60の方が良いのでは?とも考えましたが、50より60の方が、より暖まりづらく、より冷えづらくなるようなので50がベストと考えます。
しかし、筆者はマルチは持ちが悪いイメージが強いのですが、どこかで最近のオイルを試してレポートしたいと思います。
いかがでしたでしょうか。実際のレポートを含めて今後も検証してみたいと思います。参考になれば幸いです。
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